採水地、百済の里のお話 「森の生命水」 森の水工房


美郷町は宮崎県北部に位置する<日向市>から、海岸線を隔たること西へ40km九州山地に連なる1,000m級の山々に囲まれた小さな村。人口およそ2,600人。
ここには1,300年の時空を越えて語りつがれ、村人たちの手で護られている伝説があります。それが百済伝説。
唐と新羅の連合軍に敗れた古代朝鮮国家百済の王族たちは、最初に住みついた畿内地方からも追われて日向灘へ漂着、その後、この南郷村に居を定めた…というものです。
この村には、伝説を裏付ける銅鏡三十三面や須恵器、王族の存在をしのばせる古墳などが現存し、離れ離れとなった王族親子の御霊をなぐさめる師走祭りも、いまなお絶えることなく行われています。また敵から追われた王族がここに住まわれたとする伝承がこの村を中心にいたるところあります。
地名でいえば《神門》と書いて《みかど》、《卸児(おろしご)児洗(こあらい)》は王族に仕える女官が放浪の途中子供を産み落としたとされるあたりです。
 さらに九州山地の中でも、とりわけ雨が多い南郷村の降水量は、全国の年間平均降水量1700mmをはるかに上回る2500〜3000mm。四季を問わず降りつづける雨のたびごと、村には濃い霧がたちこめ、これが敗走してきた王族たちの身を隠したともいわれています。
その霧と雨がこの村の地層をなす四万十層にしみこみ、濾過されながら地下水となり、やがて人間が生きていくうえで欠かすことのできない清冽な涌き水となって、古人や今を生きるわたしたちを潤しつづけています。

※工場の左側が神門神社と西の正倉院の敷地